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明治初期に松江藩のお抱え塗師が生み出した八雲塗、
妖艶で色鮮やかな文様が浮かびあがる陶器

−色鮮やかな文様が浮かび上がる八雲塗−

松江藩お抱え塗師が明治初期に生み出した八雲塗。色漆や銀粉で丹念に描いた文様に半透明の飴色をした透き漆を塗り重ね、研ぎ出して仕上げる。この透漆が年月を経るごとに光の作用で、透明度を増していき、下に描かれた文様が色鮮やかに浮かび上がる。これが、他の漆器産地にはない八雲塗の最大の特徴だ。八雲塗の名は、古事記の中の日本最古の歌、「八雲立出雲八重垣 妻龍に 八重垣作る その八重垣を」にある出雲の枕詩「八雲立つ」から当時の県令にとり命名された。

−時間の経過とともに更なる鮮やかさを増す−

職人の松原昭氏は、技を磨き続けて半世紀。八雲塗を造る過程でもっとも重要とされる磨きの工程を担当する。決して派手でない、大変な仕事だ。磨きが足りなくても文様が浮き出ないし、磨き過ぎても、絵が消えてしまう。しかし、松原氏はどれほど小さく繊細に描かれた文様でも、絶妙の加減で鮮やかに浮かび上がらせることが出来る。それは、長年の修行と努力があってこそ。出来上がる漆器たちは、文様が浮き出る前から艶やかさが、見え隠れしている。これでも充分魅力的だが、三〜四年経つ頃には、更に目を奪うような鮮やかな色を放つだろう。時間の経過を待つことが出来るのも八雲塗の楽しみの一つである。


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